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ピック病(前頭側頭型認知症)とは?原因や症状、対応やケアの方法を紹介

認知症でよくみられる行動「全般」について、特徴・原因・一般的な対策を紹介します。

「ピック病」は前頭側頭型認知症のひとつです。脳の前頭葉や側頭葉が萎縮して発症する認知症(病気)で「感情」「言語」「行動」面に異常があわわれます。症状によっては人格の劇的な変化や、反社会的な行動が見られます。40歳から60歳前半の「働き盛りの世代」で発症することが多いとされています。根治する方法は現在のところ見つかっていないことから、症状を落ち着かせることを目的とした対応を心がけます。感情の変動やうつ病のような症状に対しては「抗うつ剤」を使用することもあります。
今回は、ピック病の原因や症状、対応やケアの方法を紹介します。

<もくじ>
●ピック病とは(前頭側頭型認知症との関係)
●ピック病(前頭側頭型認知症)の特徴
●ピック病(前頭側頭型認知症)で見られる主な症状
●ピック病(前頭側頭型認知症)の治療やケアについて
●介護保険サービスなどを利用して経済的負担を減らす
●とにかく、早めの受診が大切
●ピック病(前頭側頭型認知症)に限らず、認知症を疑ったら早めに相談を
●認知症で困ったらここに連絡(相談先)
●認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション
●まとめ

介護は一人で抱え込まない。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

ピック病とは(前頭側頭型認知症との関係)

認知症には、様々な種類があり、その中でも前頭側頭型認知症は、大脳の前方に位置する前頭葉や側頭葉が萎縮することで発症します。この部分は、感情や理性、言語能力など、多くの高度な機能を担っています。そのため、これらが萎縮することで、様々な行動の変化があらわれます。

ピック病は、この前頭側頭型認知症のひとつです。ピック病の最も顕著な特徴は、脳の神経細胞にピック球と呼ばれる塊が見られることです。このピック球が神経機能に障害を与えます。
現在では、前頭側頭型認知症のうち約8割がピック病といわれています。このような高い割合から、前頭側頭型認知症を指してピック病と呼ぶことが一般的になっています。

ピック病が発症すると感情が不安定になります。また、これまで当たり前だった理性的な行動がとれなくなります。このような変化は、本人だけでなく、家族や周りにも大きな影響を及ぼすことから、介護では行動の変化や感情の変異に適切に対応することが求められます。

ピック病(前頭側頭型認知症)の特徴

ピック病(前頭側頭型認知症)は、脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することで発症します。これらの部分は、理性や感情、さらには言語の機能を司っているため、萎縮により様々な症状を引き起こします。

この病気は、特に40歳から60歳前半の、いわゆる「働き盛りの世代」で発症することが多いとされています。この世代は社会的、経済的責任が重くのしかかる時期であることから、ピック病の影響は個人だけでなく、家族や職場などにも及びます。また、発症後の余命は10年ほどと短いのも特徴です。

根治する方法は現在のところ見つかっておらず、治療は主に症状を緩和させることを目的とした対処治療が中心です。また、ピック病の特徴として、本人が自身の病気を認識することが難しいという点があります。そのため、気づいた時には、すでに病気が進行しているケースも少なくありません。

ピック病(前頭側頭型認知症)で見られる主な症状

ピック病で、最も顕著に見られる症状は「感情面」「言語面」「行動面」であらわれます。これらの症状は、本人の日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼすとともに、家族や介護する側にも大きな負担を課します。
そこで、次からはそれぞれの症状の特徴について紹介します。

「感情面」で見られる症状

ピック病(前頭側頭型認知症)における症状の中でも、特に初期段階で顕著に見られるのが感情面の障害です。
感情の急激な変化により、急に怒り出したり、突然泣き出したりすることがあります。認知症の方が、急に人格が変わったような行動をとる原因のひとつにピック病があります。

「言語面」で見られる症状

ピック病の進行にともない、言語面での変化もあらわれます。
同じ話や言葉をくり返したり、言葉が出にくくなります。これらの言語の問題は、日常生活のコミュニケーションを困難にし、社会的な交流面でも大きな問題をもたらします。

スキンシップによる非言語的なコミュニケーションなど、症状に合わせた適切な対応をとることで不安や焦りによるストレスを抱えないようケアすることが重要です。

「行動面」で見られる障害

ピック病(前頭側頭型認知症)は、行動面でも変化をもたらします。以下に、ピック病が引き起こす代表的な行動の変化を紹介します。

(1)反社会的行動
ピック病の方は、自分本意な行動や反社会的な行動をとりやすくなります。例えば、列の順番を守らず割り込む、盗みや万引きをくり返すなどがあげられます。

(2)常同行動
毎日同じ行動をくり返す「常同行動」もピック病ではよく見られます。例えば、同じ時間に同じコースを散歩する、毎日同じものを食べ続けるなどがこれにあたります。

(3)被影響性の亢進(こうしん)
ピック病の方は、他人の行動を反射的に真似る模倣行動をとることがあります。これは「被影響性の亢進(こうしん)」と呼ばれるものです。また、これまでの行動を突然やめてまったく異なる行動をとることもあります。

(4)意欲や自発性の低下
ピック病が進むと周りのことに無関心になってきます。意欲や自発性が低下し、身だしなみに気を使わなくなる、注意力が低下するなどの症状が見られます。

(5)食の行動の変化
偏食や過食、または同じものを食べ続けるなど、食に関する行動にも変化があらわれます。

ピック病(前頭側頭型認知症)の治療やケアについて

ピック病(前頭側頭型認知症)は、現在のところ根治を目指す治療は見つかっていません。このため、治療の主な目的は症状を落ち着かせることになります。感情の変動やうつ病のような症状に対しては、抗うつ剤を使用することもあります。

また、ケアを行う家族などの介護者には、ピック病に対する深い理解が必要です。病気の進行過程や症状の変化を理解することで、適切な対応やケアが可能になります。また、周囲の理解を得ることも同じく重要です。社会的なサポートや地域の協力を得ることは、介護の負担軽減にもつながるため非常に重要です。
そこで、次からは介護やケアのポイントを紹介します。

常同行動を妨げてはいけない

常同行動はピック病であらわれる代表的な症状です。常同行動は、特定の時間に特定の活動を行うなど、一定のパターンに従う行動のことです(ルーチン)。この常同行動は、ある種の安心感を得るためのものと考えられ、本人にとっては非常に重要な意味を持っています。

このため、介護者の都合でこれらの常同行動を妨げると、本人の感情が高まり症状を悪化させてしまうことがあります。また、突然の変更や予期せぬ出来事も、不安や焦りなどネガティブな感情を引き起こし症状を悪化させます。

そこで、可能な限りルーチンに取り組める日常を提供しましょう。また、急な変更は避けるようにし、予定の変更が必要な場合は、あらかじめ本人が理解しやすいよう説明することを心がけましょう。

周囲に病気を理解してもらう

ピック病(前頭側頭型認知症)を患っている方は、時に万引きや盗みなど、周囲に迷惑をかけてしまうことがあります。そこで、周囲に対しこれらの行動は、認知症(病気)によるものであることを理解してもらいましょう。

本人が頻繁に利用するお店などには、事前に認知症であることを説明して理解を求めるようにします。このような対応をすることで、もし不適切な行動があったとしても、周囲はその背景を理解し、適切な対応を心がけてくれます。
また、急に怒ったり、泣き出したり、周囲が驚く行動をとることもあるので、日常的に接する人にも症状を理解してもらいましょう。

家族以外にこのような事情を話すのは、恥ずかしさやプライバシーなどで難しい面があると思います。しかし、周囲からの理解や協力は、認知症の方がより快適に、そして安心して日常生活を送るためには欠かせません。そのためにも、症状に関する正確な情報を共有し、理解と協力を求めることは大切です。

施設の利用を検討する

ピック病は、認知症の中でも特に介護の負担が大きい症状をともないます。このため、家族のケアには限界があることもあります。こうした状況においては、介護付有料老人ホームやグループホームなど、認知症の介護に特化した施設の利用を検討しましょう。

これらの施設では、認知症に対応した専門的な介護やケアを提供しており、本人の状態に合わせたサポートを行っています。また、安全で安心できる生活環境を提供することで、本人だけでなく、家族の負担も軽減することができます。

介護保険サービスなどを利用して経済的負担を減らす

ピック病は、発症年齢が比較的若い“働き盛り”の世代に発症することが多く、これが原因で家庭が経済的に困窮することも少なくありません。
ピック病(前頭側頭型認知症)は、指定難病に登録されるような病気であることから、医療費の負担が大きくなる傾向にあり、経済的にも大きな負担をともないます。そこで、医療費の自己負担額が一定額を超えた場合には「高額医療費制度」を利用し、超過分の助成を受けるようにしましょう。

さらに、ピック病の患者さんでは、通常は65歳以上の高齢者を対象としている「介護保険サービス」を40歳から受けられます。
介護保険サービスを利用することで、在宅介護や施設介護にかかる費用の一部を補助してもらえる他、介護に必要な様々なサービスを受けることができることから、介護やケアの質を保ちつつ、家族の介護負担を軽減することができます。

とにかく、早めの受診が大切

ピック病が疑われるような症状があらわれた場合、たとえ軽微であっても、すぐに専門機関へ相談し、然るべき医療機関を受診するようにしましょう。
早期に正確な診断を受けることで、適切な治療やケアの計画を立てることが可能になり、本人や家族にとってもその後の対応を考える上で大きな助けとなります。
ピック病の診断では、CTやMRIを用いた脳の萎縮の検査が一般的に行われます。また、脳の血流を見る検査が行われることもあります。

ピック病(前頭側頭型認知症)に限らず、認知症を疑ったら早めに相談を(相談先)

アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症では症状のあらわれ方が異なるなど、認知症の介護・ケアには専門家による正しい知見、指導が必要です。
ピック病に限らず、もし認知症を疑うようなことがあれば、すぐに専門機関に相談しましょう。早期の対応により、発症リスクを抑えることや症状の軽減が期待できます。
また、このような対応は、本人や家族全員のストレス軽減や介護の負担軽減にもつながり、全員の「生活の質(QOL)」の向上にもつながります。

<相談機関>
もし認知症を疑ったら以下へ相談してください。

(1)まずは、一般的な医療機関(かかりつけの医療機関)
(2)認知症専門外来や、全国もの忘れ外来
(3)地域包括支援センター

また、すぐにケアマネジャーに相談できる環境であれば、詳しい症状や不安な点などを伝えて、必要な支援を教えてもらいましょう。

外部からの刺激は認知症の予防や改善に効果的

認知症の予防や進行を遅らせる、また、認知症を持つ高齢者と家族との間で良好な関係を築くためには、様々な交流を通じて外部からの刺激を受けること、そしてその刺激により物事への興味や関心を持ってもらうことが大切です。

デイサービスなどの施設では、様々な活動やプログラムを通じて、高齢者同士の交流が促され、新たな興味や関心を見つける機会にあふれています。
まだ、利用されていない方は、このような施設の利用も、一度検討してみてください。

まとめ

ピック病は、前頭側頭型認知症のひとつであり、大脳の前方の前頭葉や側頭葉が萎縮することで発症する認知症です。

そこで、少しでもピック病を疑うような行動に気付いたら、早めにケアマネジャーや専門機関に相談しましょう。早期に正しい対応をとることは、症状の発症を抑えたり、症状を軽くするためには非常に効果的です。
さらには、介護の負担を軽くすることにもつながるため、認知症の方だけではなく、家族などの介護者の「生活の質(QOL)」も向上させます。

また、絶対に一人(家族)だけで悩まないでください。

ケアマネジャーなどの専門家や医療機関、専門機関を頼り、介護する人も適切なサポートを受けるようにしましょう。強いストレスを抱えることがないよう、介護を通じて「自己嫌悪」に陥ることがないよう、自分自身もいたわってあげてください。

もし、ストレスを抱え、つらい気持ちになったときには、デイサービスやショートステイなどのサービスを使って本人と距離を置く「離れる介護」も検討してみてください。色々な思いや考えを整理したり、自分だけの時間を楽しんだりすることでリフレッシュすることは、日々の介護にゆとりを与えます。

私たちは、認知症の方と家族がより良い関係を築くためには、この「ゆとり」がとても大切だと考えています。

介護は一人で抱え込まない。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

【監修】
榎本(認知症ケア指導管理士)
アズハイムで約9年の現場経験を経て現在は、本社のシニア事業部でDX介護を担当。

<参考文献>
厚生労働省「若年性認知症ハンドブック」
日本経済新聞「働き盛りで認知症 ピック病、こんな症状出たら受診を」