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認知症のBPSD(周辺症状/行動・心理症状)が起きる原因と症状、予防と対応策を紹介

認知症でよくみられる行動「全般」について、特徴・原因・一般的な対策を紹介します。

認知症の症状は、「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」の2つに分けられます。BPSDは中核症状の段階で受ける強いストレス(不安や焦り)などが原因で発症する二次的な症状です。BPSDが発症すると、抑うつや妄想、幻覚などの精神的な症状や、徘徊、暴言・暴力などがあらわれます。BPSDは根治できないため、BPSDの発症を抑える、または発症後の症状を軽くするための予防や対応が重要です。
そこで今回は、BPSDが起きる原因と症状、また普段から取り組む予防と対応策を紹介します。

<もくじ>
●BPSDとは(周辺症状/行動・心理症状)
●BPSDが発症する要因
●BPSDの主な症状
●BPSDの方への対応
●「中核症状」の代表的な症状
●認知症はとにかく早めの相談が大切
●認知症で困ったらここに連絡(相談先)
●認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション
●まとめ

介護は一人で抱え込まない。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

BPSDとは(周辺症状/行動・心理症状)

認知症の症状は、「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」の2つに分けられます。BPSDは中核症状の段階で受ける強いストレス(不安や焦り)などが原因で発症する二次的な症状です。

周辺症状は「行動・心理症状」ともいわれ、英語で表記した「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字をとってBPSDと呼ばれます。中核症状は、認知症になるとほぼあらわれる症状で、時間や場所、人物の把握や認識が難しくなる、新しいことが覚えられなくなるなどが代表的です。

しかし、BPSDは認知症になった人が必ず発症するわけではなく、環境や人間関係などで発生する不安や焦りなどのストレスが要因で発症するケースが多いです。BPSDが発症すると、抑うつや妄想、幻覚などの精神的な症状や、徘徊、暴言・暴力などがあらわれます。

BPSDは根治できないため、日頃からBPSDを発症させない、または発症しても症状を軽くすることを目的にした対応が重要です。これには、本人の感じるストレスを軽減する、安心して過ごせる環境を提供する、そして症状への理解と適切な介護が求められます。

BPSDが発症する要因

認知症の方は中核症状があらわれることで、今まで普通にできていたことが難しくなったり、新しいことをおぼえることが難しくなるなど、日常生活で様々な困難に見舞われます。これによって本人は大きなストレスを抱えることになりますが、さらに周囲からの「心無い態度」が加わると不安や焦りが増し、一層強いストレスを抱えBPSDが発症しやすくなります。

このようにBPSDは、本人を取り巻く環境や人間関係が要因で発症することが多いです。したがって、家族などの介護者は認知症やBPSDへの深い理解とともに、本人の気持ちに寄り添った対応をとることを心がけます。

例えば、認知症の方が何度も同じことを聞くようなときには、「さっきも言いましたよ」といった本人にストレスを与えるような対応ではなく、はじめて聞くような態度で丁寧に対応することが求められます。

介護者は常に認知症の方に「安心感」を感じてもらうように心がけましょう。これがBPSDの発症を防ぐ、または症状を軽くするためには最も大切です。また、このような配慮は、認知症の方の「生活の質(QOL~Quality of Life)」も向上させます。

BPSDの主な症状

BPSDが発症すると、認知症の方には様々な精神的、または行動的な変化があらわれます。

(1)精神的な変化
不安や抑うつ、妄想、幻覚、誤認など、精神的な苦痛をともなう症状があらわれます。

(2)行動的な変化
徘徊や多動、不潔行為、収集癖、暴言・暴力などがあらわれます。

BPSDの発症を防ぐ、または症状を軽くするための対応

BPSDの対応で最も大切なことは、本人の気持ちに寄り添うことです。ここでは、BPSDの発症を防ぐ、または症状を軽くするためのポイントを3つ紹介します。

認知症の人の「できること」「やりたいこと」を適切にサポートする

認知症が進むと自分ではできないことが増えることから、周囲が過剰に干渉することがあります。しかし、認知症の方にも「できること」、そして「やりたいこと」があり、これを阻むと強いストレスを抱きBPSDを招く原因になってしまいます。

このような場合、安易に「それは、私がやります」といったような言葉をかけるのではなく、本人が意欲を持っていることなら、手を出さず見守るようにします。逆に「お手伝いが必要なときはいってください」「上手にできましたね」といった肯定的な言葉をかけ、本人の自尊心を高めることが大切です。

このような存在価値を確認し、自己肯定感を高める行動に対して「まだ終わらないんですか?」など、意欲を失うような言葉は絶対にかけてはいけません。

認知症の方が自分の力でできることを行い、その過程で達成感や喜びを感じることができれば、それは「生活の質(QOL)」を大きく向上させることにつながります。そのためにも、家族などの介護者は、認知症の方のできることや、やりたいことを適切に理解し、支援することが大切なのです。

認知症の人の自尊心を傷つけてはいけない

認知症になると、やりたいことが思うようにできなくなったり、伝えたいことを上手に伝えることが難しくなり、不安や焦りを抱えるようになります。そのようなとき、否定するような言葉や強制するような言葉をかけると、本人の自尊心を深く傷つけてしまいます。
このような対応が、BPSDの発症を招き、症状を悪化させる原因になることから言葉や態度には十分気をつけなければなりません。

また、聞いた内容は忘れても自尊心を深く傷つけられると、そのときに受けた嫌な感情だけは残ってしまうことがあります。この感情は、良好な関係を築く上での阻害要因になるため十分に注意が必要です。

「中核症状」の代表的な症状

BPSDを深く理解するためには、同じように中核症状の深い理解が欠かせません。基本的な対応は先ほど紹介したBPSDの方への対応と同じですが、ここでは中核症状の代表的な症状を紹介します。

中核症状.1「記憶障害(もの忘れ)」

中核症状の一つである記憶障害は、一般的に「もの忘れ」とも呼ばれ、特に初期段階で顕著にあらわれます。新しいことを覚えられない、同じことを何度も繰り返し聞く、物を置いた場所を忘れるなどが代表的な症状です。

中核症状.2「見当識障害」

見当識とは、私たちが日常生活で自然と行っている、日付や時刻、場所や人物などを総合的に把握して状況を理解する能力のことです。この能力は、日常生活の様々な場面で環境に適切に対応するためには欠かせません。

しかし、認知症で見当識障害になると、時間や場所、人物についての理解・認識が難しくなります。また、認知症の原因の6割以上を占める「アルツハイマー型認知症」の場合、見当識障害は「時間」「場所」「人物」の順に発症することが知られています。そこで、それぞれの障害について以下に詳しく紹介します。

(1)「時間」に関する見当識障害
認知症の中でも、時間に関する見当識障害は、日常生活において多くの混乱や不便を招きます。ここでは、代表的な以下の症状を紹介します。

〇日にちや時間が分からなくなる
最も一般的な症状のひとつが、日にちや時間が分からなくなることです。

〇季節感が分からなくなる
季節感の喪失も時間に関する見当識障害でよく見られる症状です。認知症の方は、屋外の気温や天候、自然の変化から現在がどの季節であるかを判断できなくなります。このため、季節に合う衣服を選ぶことができなくなります。

〇自分の年齢が分からなくなる
見当識障害がさらに進行すると、本人は自分が現在何歳であるか、または自分の人生のどの段階にあるのかを理解することができなくなります。

(2)「場所」に関する見当識障害
屋内外を問わず、自分が現在いる場所が分からなくなる、理解できなくなる障害です。ここでは、代表的な以下の症状を紹介します。

〇屋内、屋外を問わず、現在いる場所が分からなくなる
認知症の方は、自分が現在どこにいるのかを把握することができなくなります。これは、自宅の中であっても、あるいは長年住んでいる地域であっても同様です。

〇自宅と認識できずに帰宅しようと外出してしまう
さらに、自分が現在いる場所を自宅と認識できず、帰宅しようと外出してしまうことがあります。この行動は、徘徊に発展することもあり、本人の安全に重大なリスクをもたらします。

〇自分の家のトイレが分からなくなる(失禁してしまう)
自分の家のトイレがどこにあるのかを理解できず、これが原因で失禁してしまうことがあります。本人にとって恥ずかしさや困惑を招くため、認知症を悪化させるストレス要因になってしまいます。

(3)「人物」に関する見当識障害
認知症において人物に関する見当識障害は、時間や場所の認識が難しくなった後、最後にあらわれる傾向があります。この症状の出現は、見当識障害がかなり進行している状態であり、本人の生活に深刻な影響を及ぼします。

〇家族など親しい人の顔が分からなくなる
認知症が進行すると、本人は徐々に家族や親しい人の顔を識別することができなくなります。

〇自分の顔が分からなくなる
人物に関する見当識障害がさらに進行すると、本人は鏡を見ても自分自身の顔を認識できなくなります。自分自身さえも認識できなくなるこの段階は、認知症の進行がかなり進んでいることを意味しています。

中核症状.3「実行機能障害」

実行機能障害とは、身の回りのことなど、日常生活で以前はできていたことができなくなったり、物事の段取りが悪くなるなど、行動を調整する脳の機能が受ける障害です。

実行機能障害になると、例えば、日々の家事の段取りが悪くなるなど、計画立てて物事をすすめたり、問題を解決するといった能力が低下します。

ただし、実行機能障害が原因で認知症の方が失敗をすることがあっても、介護者は努力を認める、感謝をするなどの対応を心がけ、ストレスを抱えないようにしてあげましょう。

中核症状.4「失語」「失認」

失語は、ものの名前が出てこなくなるなど、言葉を見つけることや言語を使用することが難しくなる症状のことです。失語は、コミュニケーションを難しくさせることから、認知症の方とその周囲にとって大きな課題となります。

また、見る、聞くなどをしても対象物を認知することができなくなる失認も認知症の進行にともなってあらわれる中核症状です。

安心してもらうため、スキンシップによる非言語的なコミュニケーションを試みるなど、認知症の症状を悪化させない工夫が必要です。

早期の治療や正しい対応でBPSDを抑えることができる

見当識障害などの中核症状から生じる強い不安や焦りは、BPSDという二次的な症状を発症させる原因になります。
BPSDが発症すると、徘徊をはじめ、幻覚や妄想、暴言や暴力、抑うつなど、周囲を驚かせるような症状があらわれ、介護の負担も一層大きくなります。

とにかくBPSDに対しては早期の診断と治療が大切です。これにより、発症リスクを抑えることや症状の軽減を期待できます。また、このような対応は、本人や家族全員のストレス軽減や介護の負担軽減にもつながり、全員の「生活の質(QOL)」の向上にもつながります。

BPSDは、人間関係や環境で生じるストレスの高まりが発症の引き金になるため、誰しもが発症するわけではありません。そのため、いつもとは違う本人の様子に気づいたら早めに対応しましょう。

また、BPSDは、抗うつ薬や抗不安薬などの投薬によって症状を緩和することができます。ただし、投薬治療は本人の健康状態や他の使用している薬との相互作用を考慮しなければなりません。

認知症の方やその家族にとって、BPSDは大きな課題ですが、早期の治療を通じて、その影響を軽くすることは十分可能です。

まとめ

このコラムでは、認知症のBPSDについて詳しく紹介してきました。BPSDが発症すると幻覚や暴力など、周囲を驚かせるような症状がみられることがあります。

そこで、少しでもBPSDを疑うような行動に気付いたら、早めにケアマネジャー や専門機関に相談しましょう。早期に正しい対応をとることは、症状の発症を抑えたり、症状を軽くするためには非常に効果的です。
さらには、介護の負担を軽くすることにもつながるため、認知症の方だけではなく、家族などの介護者の「生活の質(QOL)」も向上させます。

また、絶対に一人(家族)だけで悩まないでください。

ケアマネジャー などの専門家や医療機関、専門機関を頼り、介護する人も適切なサポートを受けるようにしましょう。強いストレスを抱えることがないよう、介護を通じて「自己嫌悪」に陥ることがないよう、自分自身もいたわってあげてください。

もし、ストレスを抱え、つらい気持ちになったときには、デイサービスやショートステイなどのサービスを使って本人と距離を置く「離れる介護」も検討してみてください。色々な思いや考えを整理したり、自分だけの時間を楽しんだりすることでリフレッシュすることは、日々の介護にゆとりを与えます。

私たちは、認知症の方と家族がより良い関係を築くためには、この「ゆとり」がとても大切だと考えています。

介護は一人で抱え込まない。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

【監修】
榎本(認知症ケア指導管理士)
アズハイムで約9年の現場経験を経て現在は、本社のシニア事業部でDX介護を担当。

<参考文献>
川崎幸クリニック杉山孝博先生著 「認知症の9大法則 50の症状と対応策」
厚生労働省「認知症の行動と対応について」
認知症介護情報ネットワーク「BPSDの定義、その症状と発症要因」