認知症による顔つきの変化の特徴、原因、早期発見の重要性
最近、親の表情が乏しい、元気がないなど顔つきが変わったことで病気を心配している家族に向け、特徴・原因・一般的な対策を紹介します。
高齢者の顔つきの変化をとらえることは、認知症の早期発見につながります。顔つきの変化は、必ずしも認知症が原因というわけではありませんが、高齢者の顔つきに変化(違和感)を感じたら、早めに認知症の専門家や専門機関に相談しましょう。また、すでに認知症であることが分かっている場合も、進行状況を知る重要な手がかりになるため、同じく専門機関へ相談しましょう。
<もくじ>
●認知症の方の顔つきの変化の特徴
●顔つきが変わる原因
●認知症で困ったらここに連絡(相談先)
●認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション
●まとめ
認知症による顔つきの変化は、しばしば見過ごされがちですが、これは認知症の早期発見と対応に繋がる重要なサインです。
例えば、高齢者にボッーとした表情が多く見られるようになったら、認知機能の低下が原因かもしれません。また、認知症の方の目つきが険しくなってきた場合は、認知症が進行しているあらわれかもしれません。家族は、こうした日常の小さな変化を見落とさないことが大切です。
このような変化に気づき、早めに専門家や専門機関に相談することで、認知症の進行を遅らせたり、症状の改善も期待することができます。
そこで、このコラムでは高齢者の顔つきの変化について特徴や原因とともに、早期発見の重要性なども紹介します。自宅での介護だけでなく、施設に入居している高齢者の家族が、施設の介護方針や状況を理解する際にもお役立てください。
介護は一人で抱え込まない。介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。
認知症の方の顔つきの変化の特徴
顔つきの変化には個人差がありますが、いくつか認知症でみられる代表的な特徴があります。
これらの変化に早く気づくことで、適切な介護や検査、治療を受ける機会が増え、認知症の進行を遅らせることも期待されます。
以下のような表情の変化が見られたら、早めに専門機関へ相談し正しい対応を取りましょう。
<目つき(目元)や口元の変化>
(1)元気や活力が感じられないうつろな目つき。
(2)怒ったような険しい目つき
(3)活気がなく、まぶたがたるんでいる。
※加齢によるものではなく、認知症の進行と関連している場合がある。
(4)悲しそう、不満そうな口元。
<表情全体の変化>
(1)常に悲しげな表情。
(2)ぼんやりとして集中力がない。
(3)元気がなく無表情。
(4)顔全体がたれたような感じ。
(5)感情の起伏がない(小さい)
顔つきが変わる原因
顔つきが変わる原因は様々ですが、認知症が原因の場合「BPSD(行動・心理症状)」の可能性があります。
認知症になると、中核症状として記憶機能、見当識機能、実行機能、認知機能などに障害があらわれます。これらの障害をもとにして二次的に発症するのが、「BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia~行動・心理症状)」と呼ばれる周辺症状です。
BPSDでは、徘徊や暴言、暴力などの行動的な症状や、うつ病や妄想などの心理的な症状があらわれ、時に周囲を驚かせる行動を取ることがあります。
また、BPSDは「身体的要因」「環境的要因」「心理的要因」により症状が発症します。
身体的要因としては、他の健康問題に起因する痛みや違和感、脳機能の問題、薬剤の副反応などがあげられます。環境的要因としは、周囲の不適切な反応、人間関係、生活環境の変化、孤独感などがあげられます。また、心理的要因としては将来への不安、焦り、生活でのストレスなどがあげられます。
また、認知症(BPSD)以外でもアパシーや日常生活からの刺激が減ったことが原因で、顔つきが変わることがあります。
うつ病が原因(BPSD)
認知症の中核症状がもとで、BPSDの症状のひとつ「うつ病」が発症し、これにより顔つきが変わることがあります。認知症が進行すると、自分ではできなくなることが増え、ストレスや悲観的な考えを抱きがちになります。さらに、周囲からの批判で自信を失ったり、疎外感にさいなまれるようになるとうつ病が発症します。
また、うつ病以外のBPSDでも顔つきが変わることがあります。
アパシー(無気力・無関心)が原因
うつ病に似ている症状にアパシーがあります。アパシーは無気力・無関心になっている状態を指しますが、本人に悲観的な感情がない点がうつ病と大きく異なります。また、たいてい本人が困っていると感じていることは稀で、家族が介護で苦労することもそれほどないようです。
しかし、長い間アパシーが続くと1日中活動しないでテレビなどを見て過ごすなど、体力が落ちることが心配されます。
また、アパシーは認知症特有の症状ではないものの、認知症を発症した方に見られる症状でもあるので注意が必要です。
刺激が減ったことが原因
高齢者の顔つきが変わる原因のひとつに、日常の刺激が減ったことがあげられます。単調で変化の少ない日々が続くと、表情が乏しくなります。
これは認知症に限ったことではありませんが、認知症の方の場合、症状が進行して顔つきに顕著な変化が見られることがあります。
そこで、高齢者や認知症の方の日常生活では、様々な活動や外部との接触を増やすことが重要になります。これによって脳が活性化すると、豊かな表情を取り戻すことが期待されます。
顔つきが変わったなど、認知症で困ったらここに連絡(相談先)
認知症と一言でいっても、「アルツハイマー型認知症」や「レビー小体型認知症」など、認知症のタイプによってBPSDの症状や対応も異なります。
そこで、帰宅願望などの認知症の症状を疑ったり、症状が悪化した際は、ケアマネージャーなどの専門家や専門機関へ相談し適切な指導を受けましょう。正しい対応を早期に行うことは、認知症自体の進行を遅らせることや、症状の軽減に効果的で、さらには認知症の方だけではなく家族の「生活の質(QOL)」の向上にもつながります。
そこで、帰宅願望や認知症全般に関する主な相談先を紹介します。
(1)一般的な医療機関(かかりつけの医療機関)
(2)認知症専門外来や全国もの忘れ外来
(3)地域包括支援センター
まずは、一般的な医療機関やかかりつけの医療機関を尋ねてみましょう。
また、場合によっては認知症専門外来や「全国もの忘れ外来」を利用します。もの忘れ外来では、物忘れが自然な老化によるものか、病的なものかを診断し適切な治療を行います。
地域包括支援センターでは、高齢者やその支援者に対して、総合相談、介護予防ケアマネジメント、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援などの幅広いサービスを提供しています。
介護の問題、健康面の悩み、金銭的な問題、虐待など、様々な相談に対応しています。高齢者本人や家族が、どのような小さな心配ごとでも相談できるよう、様々な専門スタッフが配置されています。
地域包括支援センターは、各市区町村に設置され、利用はほとんどの自治体で無料です。自治体のホームページなどで担当するセンターの情報を確認しましょう。
認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション
認知症の予防や進行の遅延、さらには認知症を持つ高齢者と家族との良好な関係づくりには、コミュニケーションが大切です。それには、認知症への家族の深い理解と、高齢者が多様な交流の中で新しい刺激を受け、興味や関心を持つことが大切です。
家族との対話や共有される活動を通じて、認知症の高齢者は新たな視点や情報を得る機会を持ちます。これにより、認知的な刺激が促されるため、認知症の進行を遅らせる効果が期待されます。また、こうした積極的な交流は、高齢者の「生活の質(QOL)」の向上にも効果的です。
さらに、デイサービスなどの外部施設を活用することも、認知症の高齢者の方には様々な刺激を受ける素晴らしいコミュニケーションの機会となります。このように、認知症の予防や改善には、家族の理解とサポート、多様な社会的交流の場が欠かせません。
まとめ
このコラムを通じて、高齢者の顔つきの変化をとらえる重要性をご理解いただけたと思います。そこで、顔つきの変化を見落とさず、何かおかしいと感じたら、一人(家族だけ)で悩むのではなく、専門家や専門機関へ相談し適切な指導を受けましょう。
時には、施設を利用して本人と一時的に離れることも必要です。重いストレスを抱えたり、自己嫌悪に陥る前に適切なサポートを求めましょう。
デイサービスやショートステイなどで介護施設を利用する場合には、介護福祉士や認知症ケア指導管理士の資格を持つ職員がいる施設を選ぶと、より安心した認知症ケアが受けられます。
認知症の方がより穏やかに暮らすためには、専門家(機関)、家族、社会が一丸となって支えることが大切ですが、そこには「ともに暮らす(生きる)家族」が幸せになることも不可欠です。そのためには、認知症と上手に付き合っていくことが大切です。
今回のコラムが、認知症の高齢者とご家族が幸せに過ごす一助になれば幸いです。
【監修】
榎本
認知症ケア指導管理士
アズハイムで約9年の現場経験を経て現在は、本社のシニア事業部でDX介護を担当。
介護は一人で抱え込まない。介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。
<参考文献>
厚生労働省「BPSD:認知症の行動・心理症状」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0521-3c_0006.pdf
厚生労働省「厚生労働省の認知症施策等の概要について」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000031337.pdf